医療「ミス」ではない [医療事故]
西日本新聞 がんと誤診 乳房切除 ミス認め賠償検討 社会保険田川病院
福岡県田川市の社会保険田川病院(吉村恭幸院長、348床)が7月、同市内の30代女性の左胸にできた良性腫瘍(しゆよう)を乳がんと誤診し、手術で乳房の一部を切除していたことが30日、分かった。手術後に摘出した腫瘍を病理検査して、初めて良性と判明したという。同病院は「良性なのにデータ上はがんであることを示す、極めて珍しい症例で、事前の診断は順当だった」としつつも、結果的に誤診を認め、女性側に賠償金を支払う意向を示している。
■術前検査で悪性と診断
同病院は、厚生労働省が指定した地域がん診療連携拠点病院。
病院側の説明によると、女性は6月下旬、「左胸にしこりがある」と来院。乳房エックス線撮影(マンモグラフィー)検査や乳腺の画像検査、腫瘍の表面組織の病理検査を受け、組織のでき方や細胞分裂の進行速度が、がんの特徴と一致したという。コンピューター断層撮影(CT)や血液検査のデータもがんの疑いを示した。病院は段階が進んだ乳がんと診断。執刀医らが女性に病状を説明し、7月中旬、手術で腫瘍をすべて取り除いた。
ところが、手術後に摘出した腫瘍の細胞組織を病理検査した結果、がんではなく良性だったことが判明。同病院は女性と家族に謝罪した。女性は8月に退院。健康状態に問題はないが、乳房の形が変わったという。
田川病院を運営する同県社会保険医療協会(福岡市)によると、女性側の苦情を受け、摘出した腫瘍の再鑑定を外部の専門医に依頼している。診断ミスが起きた原因を特定して、賠償額を協議することにしている。
同協会は「腫瘍を摘出して内部を検査しないと(良性とは)分からない特異な例だった」と釈明。吉村院長は「女性には大変申し訳ない。同じ過ちが繰り返されないよう、今回の症例を学会で報告する」と話している。
■セカンドオピニオンを 医事評論家森田浩一郎氏(医学博士)の話
データ上は悪性だが実際は良性という腫瘍は、極めてまれだが過去にも報告例はある。がん診断の誤りを避けるためには、別の医師に意見を求めるセカンドオピニオン制度の導入が有効ではないか。
「ミス」「誤診」という言葉が散りばめられ、報道するメディアの医師らに対する悪意が感じられます。この症例を正しく診断して手術を取りやめることを出来た医師がいるでしょうか。
また、逆の経過を辿っていたらどうだったか。悪性の可能性があるものの、良性の可能性も高い。暫く手術せずに経過を見ましょう、などとして、腫瘍が転移し不幸な転帰を辿ったとしたら、きっとこれも訴訟、賠償ということになったでしょう。
最悪の事態を考えて最善を尽くすとすれば、こうした結果はむしろ必然だったと言えるのではないでしょうか。この医師と病院を非難するならば、今度は乳腺外科の立ち去り方サボタージュ、医療崩壊が始まります。
医事評論家森田氏のコメントも賛成できません。別の医師に意見を求めても、この症例では手術を勧められたことと思います。強いて言えばセカンドオピニオンでも手術を勧められていれば、結果が同様となっても患者側が納得できたのかも知れませんが。セカンドオピニオンでこの経過が変わったとはとても思えません。
新聞もコメントを求めるのなら、別の乳腺外科医に求めるべきでしょう。森田氏は医師ですが、臨床よりもマスコミに露出度の高い人のようで、少なくとも乳腺専門ではありません。
新聞を勘ぐれば、医療者を非難しようと思い乳腺外科医にコメントを取りに行ったら、書こうと思っていた記事に反するものしか得られなかったのではないかとさえ思います。
田川病院側は中途半端な考え方で安易に「賠償」すべきではありません。主治医に「ミス」はありません。







07年は本当にこの手の「医療バッシング」とも思える報道が目立った一年でもありました。
本来、メディアが批判すべきは、医療現場を混乱に導いた「医療行政=政府と厚労省」である筈なのにも拘らず、医師個人に責任を押し付けるかの如くの報道が多かったのには閉口させられました。
私としては、来年こそ巨視的な視点に立った報道を期待するばかりです。
by yokohamachuo (2007-12-31 20:16)
医療行政のまずさもあり、また小松秀樹氏が述べるような、「病院に行けば何でも治る、ベストコースを辿らなければすべて医師の責任」と言うような考え方が蔓延してしまっていることも挙げられると思います。
2007年最後の日に流されたこのニュースに黙っておられず、すぐに取り上げてしまいました。
yokohamachuoさんの仰る通り、もっとマクロな、そして医療の本質を理解した報道を期待したいものです。
コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2007-12-31 23:48)
あけましておめでとうございます。
落ち着いた語り口で、きちんとひとつづつ書かれている先生の記事をみると心が落ち着きます。今年も楽しみにしております。宜しくお願いいたします。
by 僻地の産科医 (2008-01-01 15:44)
あけましておめでとうございます。
時にこうした医療バッシング記事に対して熱くなりすぎているという自覚があることもあります。
今のところその結果ブログ炎上、などという事態にはなっていないのですが、暴走・書きすぎ等ありましたらご指摘下さい。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。
コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-01-01 19:57)